行き先。


朝のラッシュアワー。うだるような暑さの中、駅とは逆のファミレスへと向かう。私と同じく 険しい顔をした人たちと すれ違うと、何とは無しに 以前 読んだ書籍が 思い浮かんだ。

「物質世界の 征服は 絶え間なく人間の注意と意志を引きつけ、そのために、本質的な、精神的な世界は、ほとんど完全に忘れ去られてしまった」

「明らかに、科学には計画性がない。デタラメに発達するものである。…全く、人間の状態を改善したいという願望によって動いているのではない」

(アレキシス・カレル(1992)「人間 この未知なるもの」渡部昇一 訳・解説.三笠書房:知的生きかた文庫.43,59)

1912年にノーベル生理学・医学賞を受賞したアレキシス・カレルの著書、「人間 この未知なるもの」。最初に出版されたのは 1930年代。それから約80年が経った今、主に ITの発達によって このような傾向は 猛烈な勢いで 加速しているように感じる。

・・・ 同著を知ったきっかけは、伊藤忠商事の会長・社長を務められた 丹羽宇一郎さんの書籍だった。同氏は 社長就任中、社員の目線に立つために 出勤には 運転手つきの自動車を使用せず、 電車を利用されていたという。そんな実直さに惹かれて、20代のころ 同氏の書籍を 何冊か拝読し、(どのタイトルかは忘れましたが)その中で 紹介されていた。

日経電子版で 丹羽さんがブログを書かれていることを 先日 偶然 知った。その中で、新宿ルミネの劇場に 漫才を観に行かれたエピソードがあり、「(漫才は)日本の経営者や政治家など指導者層、知識層にも楽しんでもらいたい文化だ」と書かれていた。理由として、思い切り笑って 頭と心の中を掃除したり 精神的な豊かさを養える点などを 挙げられていた。

(日本経済新聞 電子版 「丹羽宇一郎氏の経営者ブログ」よしもと漫才を見に行こう,2017 4/12)

・・・

笑いは「ギャップ」や「ズレ」から生まれる。その特性は 生きていく中で 時に 訪れる 世知辛さを「ネタ」という形で 昇華してくれる。笑いには クッションの機能がある。

AIが 発達していく中、はてさて “この未知なる” 人間 固有の能力は この先 どんなものが残されていくのだろう。その一つとして、矛盾を笑いに変える 創造性が 挙げられる気がする…というより 個人的に、ここだけは 機械に 負けたくない、と常々 考えている。

”人生はクローズアップで見れば悲劇 ロングショットで見れば喜劇 ”

チャールズ・チャップリンはこんな言葉を残した。喜劇王にはなれないけど、たった一人でも 誰かを笑わせることができる ジイさんにはなりたいな。


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