静寂


時々、もう一度 観たくなるような映画に 出会う。私にとって「ノクターナル・アニマルズ」という作品は最近、その一つとなった。最初に観たのはいつだったか思い出せないし、あれから 頭に思い浮かぶこともなかったし、どこかで見かけたわけでもなかったが、ある日 急にもう一度 観たくなった。

同作品は、「(主人公の)“彼女”と“彼”とのストーリー」、そして、「“彼”が新たに書き上げた小説のストーリー(「ノクターナル・アニマルズ」という同タイトルの この小説が“彼女”の自宅に送られてきたところから全てが始まる)」が交互に走る。

主旋律の「“彼女”と“彼”とのストーリー」においては、その時々の互いに対する、或は、自らの生き方に対する情念のせめぎ合いがみてとられ、その波は最後に激しい飛沫をあげてぶつかる …そう、画面越しに もう一度立ち会いたかったのは このラストシーンだった… “彼女”が 東洋風のレストランでお茶を飲む 場面を傍観していると、胃袋に鈍さを感じながら 自分の何かが ぐるりと逆流していくような、身に覚えのある経験が、私の場合、再現される。確か音響は入っていたと思うが覚えていない。そこに広がるのは 静寂だ。

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同作品は日本公開時、「…それは愛なのか、復讐なのか」というコピーがつけられたようだが(劇中では「revenge」という文字だけが大きく描かれたアートが登場する。ちなみに主人公の“女性”はアートギャラリーのオーナーという設定)、人は 分類が好きだ。その方が認知することが容易になったり、可能になったりして、得体の知れないものに ジタバタする必要がなくなるからだ。

ただ、割り切れなかったり、言葉では明らかにできないようなところに、何かしら大切なものがあったり 心惹かれるものがあるように思う。もちろんそれはいいことばかりではなく、時に、恐ろしく、受け入れがたいものであったりもするだろう。ただ、安易に引き出しにしまわずに、その気配を必死に探ろうとすることで、自分の内面が いくらか拡充していくような気がする。

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一方、主人公が(以前に 罪を犯してしまった人や、やさぐれちゃった人なら尚良)が、何とかかんとかして、スカッと敵を蹴散らしていくような映画も楽しんで観る…なんてことを考えると、いろんなことに あれこれ思いめぐらす私は、単純なんだと思う。


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