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After the rain,


散髪するときは、近所の “カット専門店” に 行っている。さほど こだわりのない自分にとって、美容院は サービス過多で、とても 高く感じるから。

その お店に 通い続けて 早 10年・以上 。リーズナブルな上、予約や 料金などにおいて面倒なシステムが 一切なく、スタッフの方を 無料で 指名することもできる。

ここ数年、Bさんに ずっと お願いしてきた。 上手だし、内面も 素敵な 感じだから。 ただ、Bさんは 別の店舗も 掛け持ちしているため、行ったら不在、ということも しばしば。以前は 日を改めていたけど、昨年半ば あたりから 不在の際は 他の方に 切ってもらうようにしていた・・・

・・・昨年10月。Bさんが いらしたので、久しぶりに指名した。待つこと1時間。やっとオレの番だー。手塚治虫の漫画を 戻して 席へ。しばらくして 背後に Bさん。伸び具合を ささっと チェック。ザクザク 切り始める・・・ん。。。なんだか いつもと 空気 違うなぁ・・・カットの時間は10数分くらいでしかないが、いつもの 楽しい おしゃべりが ない。というか、全く 話しかけてこない。カットも ザク切り感 ハンパない(カレーの具材の方が まだ 細かいんじゃない??)・・・なんだろう。これ・・・ん、でも 前に 味わったことがあるな、この感じ・・・あれー・・・なんだっけ・・・あ。あれに似てる。・・・別れ話を 女性から切り出されるときの、あの感じ・・・ツバが 喉を 通る音が 聞こえてくる、時が止まったような 不気味な 静寂・・・「 Bさん:はい!ありがとうございましたー」「私:…」苦虫を 噛みつぶした 顔をして 店を出る。頭の中には でっかい クエスチョンマーク。ただ、一つはっきりしていること。めちゃめちゃ 気分が 悪い。

推理。ヒントは・・・唯一 Bさんが発した 言葉しかない「B:…あれー、こんな風に 切ったんだー。なんでこんな風に切ったんだろー」・・・んー・・・他の方が 切ったのが気に障ったのか?・・・それとも体調 悪かった??・・・理由は わかんないけど、とにかく もー こんな思いは イヤだ。

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それ以降、別のお店を 試したりもしたけど、システムが煩雑だったり、2席しかない 小型店舗だったり・・・ストレスの方が 勝ってしまう・・・やっぱり あのお店が ベターかー。でも、①Bさんはイヤだし ②あと、ヘンチクリンに 仕上げる スタッフの方(一回、パンクバンドのドラマーみたいにされた.汗)もイヤだし ③ かといって、他の人 指名するかー??・・・あー。めんどくせえ。考えても 埒 明かず。結局 「指名しないで 成り行きまかせ」という ノーガード戦法を 消去法で 選択。沈んだ 気持ちのまま 月一回、例の お店へと足を運ぶ・・・それでも 年内は 運よく Bさん &“ジョーカー”以外の 適切なスタッフの方に 切ってもらい、なんとか 乗り切れたのだった。

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年明け。やはり誰も指名せず、運任せ。そしたら、順番で Bさんが 担当に・・・こわばりながら 席に着く(おちつけ・おちつけ)・・・Bさん登場・・・「 B:・・・どんな風に 切りますか?」「私:・・・お任せしますよ。」「 B:・・・年末年始は帰ってました?」「私:・・・はい。」・・・あれ?なんか 普通に 話しかけてきたぞ。その後も、高校サッカー選手権の話とか、少し ぎこちないけど、いくつかのラリーが。カット終了。上手に切ってくれたなー。次回 別の方が担当したとしても、どうカットすれば良いかがわかるように、丁寧にカードに メモするBさん。「B:ありがとうございましたー」「私:うん・・・ありがとう・・・」

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先週。無性に 髪を切りたくなり、いつものお店へ。前回の 満足感から、Bさんを指名。2週間前より スムーズに 弾む 会話・・・話題は 仕事の話に。「B:・・・仕事でも なんでも “こう(全力投球)” なん じゃない?」「私:あー、そうかも。でも、Bさんも そうじゃない?」腕は 確かだし、いつだったか『二日以上 休むくらいなら 仕事してる方がマシ!』みたいなこと話してたから。「B:・・・うん・・・そうかなぁ・・・でも、そのときの 気分によるかな・・・わたしは、気分屋だから・・・」「私:あ。あ〜・・・」思わず 笑いがこみ上げてくる。Bさんも 笑ってる。「B:・・・『どんな時でも 最高のサービスが できないと プロじゃない』って 言う人いるけど、『あー それなら、わたし、プロじゃなくて イイです!機械じゃないんで!!』って・・・」・・・2人で クスクス笑う。急に 笑ったら 右目から ちょっと涙 こぼれちゃったけど、ばれなかったかなあ。


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