a day


ワインを買いに出ようとしたら、携帯が鳴った。「呑まないか」一回り上の知人の女性からだった。呼び出された自由が丘デパート3階に向かう。滅多に連絡は来ない人なので、何かあったのかと心配の気持ちもいくらかあった。赤をすすりながら耳を傾けていると、色々と思うことがあったらしい。夫への感情、母親との関係、仕事、セックス、過去の出来事、人生の終わり方・・・スタンプラリーを伴走していたら、日付はもう変わろうとしていた。

別れると、いつものバーへ自然と足が向かう。カウンターにはできあがった男性客がひとり。深酒×客という立場×先輩カゼという最悪の混ぜものに呑まれた男は、案の定マスターに絡みだす。その内、制止を振り切って私にも侵食してきた。仕方がないのでハードカクテルを2人分注文して、ご馳走する。友好的なアプローチの裏側で、最後に残るのはどちらか、勝負をふっかけた。男性客が帰った後、2人で最近の争いごとを紹介し合った。いくつかの共通点があって、お互いクスクス笑った。

気がつくといつかのスナックにマスターと潜り込んでいた。その日はなぜか、中学生の頃に聞いていた J-POPばかり何曲も入れた。一緒に歌ってくれた女性は、以前立ち寄ったときにも働いていた娘だった。その時はこういう仕事は向いてないんじゃないかと思ったけど、案外楽しそうに働いていた。机に突っ伏していたマスターを起こして店を出ると、外は明るくなっていた。

この日は自分が人生の主役であることを忘れてしまった。


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